健康診断で血糖値が基準値より高いなどの結果が出ている場合は、恐らく「空腹時の血糖値が高い」状態と考えられます。
空腹時の血糖値は110mg/dL以上で高値(100~109は正常高値)となります。
合わせて健診の項目にHbA1c(正常値4.6~6.2%)が測定されている場合は、糖尿病と診断できる事もあります。
下記【図1】のように、空腹時の血糖値が100~109mg/dLであっても正常高値としている理由は、今後、糖尿病になってしまう可能性が考えられるからです。
110~125mg/dLの場合は、さらに糖尿病である可能性があり糖負荷試験(75gOGTT)を含め、精査が望ましいと言えます。

糖尿病の判定基準

糖尿病の診断

糖尿病の診断に関しましては、一般的には下記【図2】の様に行います。
糖尿病型と言われる項目①早朝空腹時血糖値 ・・126mg/dL以上②糖負荷試験(75gOGTT)2時間値 ・・200mg/dL以上③随時血糖値(どんな時でも)・・200mg/dL以上④HbA1c・・6.5%以上
①〜④の1つでも該当する場合は、糖尿病である可能性がありますので専門病院やクリニックを受診する事をお勧めします。
糖尿病の臨床診断のフローチャート

高血糖状態が招く3大合併症(細小血管障害)

では、なぜ健診で高血糖(または糖尿病)を指摘されたら検査・治療を開始しなければならないのでしょう。
それは、特に症状のない場合でも、糖尿病の3大合併症が進行してしまう可能性があるためです。
3大合併症には、
① 糖尿病網膜症
高血糖が続くことにより網膜の毛細血管に障害が起こります。末期になるまで視力障害などの自覚症状に乏しく進行していく過程で眼底出血を起こし、突然失明してしまう原因になります。
② 糖尿病腎症
こちらも腎不全(透析に近い状態)になるまで自覚症状に乏しく進行してしまうと、腎不全→透析となってしまいます。現在、本邦の新規人工透析導入の約半数は糖尿病腎症が原因となっています。
③ 糖尿病神経障害
神経障害に関しては個人差がありますが、3大合併症の中では早期(糖尿病発症から約6年程度)に進行していくと言われています。末梢神経障害では足の痺れ、冷感、つり自律神経障害では立ちくらみ、排尿障害、排便障害、ED、また足の病変では足の感覚低下が起こり、足の潰瘍から足壊疽(切断になる可能性あり)を起こします。

これら3大合併症の進行を防ぐには、糖尿病発症早期からHbA1c7%未満を維持していく必要があります。
そのほか、血糖コントロール以外にも血圧や脂質(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)の管理も重要となります。

動脈硬化(大血管障害)を招くリスクも

高血糖の状態が続くと、太い血管では動脈硬化(大血管障害)が加速します。
動脈硬化のリスクとして、糖尿病のほかに高血圧・脂質異常・喫煙などがあります。長年の糖尿病・高血圧・脂質異常が動脈硬化を進展させ、最終的には心筋梗塞・脳梗塞などを引き起こします。
これは、症状が出現した時には重篤な状態となってしまう事が多く、早期からの治療が必要となります。
動脈硬化においても血糖コントロールと同時に高血圧・脂質異常の治療も重要になってきます。
現在、糖尿病薬には、動脈硬化に良い効果があると考えられる「SGLT2阻害薬」「GLP-1受容体作動薬」「BG剤(ビグアナイド)」がありますので、個々に合わせた有効な治療薬の選択が重要となってきています。

健診で指摘されたら、早めの受診を

健康診断にて「高血糖」や「糖尿病」を指摘された場合は、まだ症状がないからと放置せず、
早期に専門病院やクリニックを受診し重症化を防ぐ事が重要です。